アセクシャルの恋愛と結婚|パートナーの探し方
「恋愛感情はあるのに、性的なことは望まない」あなたへ。アセクシャルとノンセクシャルの違いから、パートナーや結婚相手を見つけるための4つの経路、相手への伝え方まで、当事者の視点でやさしく解説します。まず自分の傾向を知ることから始めてみましょう。
「恋愛感情はあるのに、性的なことには気が向かない」。そう感じてきたなら、あなたは「草食」でも「奥手」でも「恋愛下手」でもありません。それらは、まわりがあなたに貼ってきたラベルです。とくに「草食系だから」と言われ続けてきた男性ほど、自分の本当の感覚に気づくのが遅れがちです。
アセクシャルやノンセクシャルという言葉が、いまはしっくりこなくても構いません。「恋愛はしたいのに、性的なことは気が重い」——その感覚があるだけで、この先の話はあなたのためのものです。性的なことを望まないあなたにも、誰かと恋愛し、結婚して生きていく道はあります。
恋愛感情はあるのに、性的なことが苦手なあなたへ
恋愛の感情と、性的な欲求は、別々の軸で動きます。これが出発点です。
人を好きになる気持ち(恋愛的指向)と、人に性的に惹かれる気持ち(性的指向)は、それぞれ独立しています。「誰かを好きになるのに、性的なことは望まない」という状態は、矛盾でも未熟でもありません。心理学でも、この2つを分けて考える見方が定着しています。
あなたの感覚に近い言葉を整理します。まず、「人に性的に惹かれるか」という軸の言葉です。
- アセクシャル(アセクシュアルとも書きます): 他者に性的に惹かれない人。恋愛をする人もしない人も含む、広い言葉です。
- グレーアセクシャル: 性的に惹かれることが、まれ・弱い・状況限定の人。
- デミセクシャル: 強い心のつながりを感じた相手にだけ、性的に惹かれる人。
次に、「人に恋愛感情を抱くか」という、別の軸の言葉です。
- アロマンティック: 他者に恋愛感情を抱かない人。
この2つの軸は、組み合わせて使います。たとえば「性的には惹かれないが、恋愛感情はある」人を、日本ではノンセクシャルと呼ぶことが広まっています。英語圏では、これを「恋愛するアセクシャル」としてアセクシャルの中に含めて理解することが多いです。呼び方の流儀が違うだけで、どちらが正しい・上ということはありません。「性は望まないけれど、恋愛も結婚もしたい」という人には、この言葉がしっくりくることが多いようです。
ひとつ補足します。「他者に性的に惹かれない」ことと、「性欲がまったくない」「性が嫌い・苦手」は、必ずしも同じではありません。性への感じ方は、求めない人・どちらでもない人・避けたい人とさまざまです。あなたの感覚も、その濃淡のどこかにあります。
どれが「正解」ということはありません。大切なのは、あなたが自分の感覚にしっくりくる言葉を持つことです。言葉がうまく見つからなくても、焦らなくて大丈夫です。
詳しい定義はアセクシャルとは?定義と他との違い、ノンセクシャルとはでも整理しています。
アセクシャルでも、恋愛も結婚もできる
「アセクシャル=恋愛しない人」というイメージは、事実と違います。アセクシャルの多くは、人を好きになります。恋人がほしいと願い、結婚を考える人も珍しくありません。
数字でも見えます。電通グループが全国20〜59歳の5万7500人を対象に行った調査では、アセクシャルに該当する人は1.56%でした(電通LGBTQ+調査2023)。英国の大規模調査でも、性的に惹かれた経験がない人が約1%、つまり「100人に1人」と報告されています(Bogaert, 2004)。あなたが思うより、同じ感覚を持つ人は多いのです。
ここが大切です。男性の当事者も、確かに存在します。「性に淡白な男性」「奥手な男性」と片づけられてきた人の中に、ノンセクシャルやアセクシャルに近い感覚を持つ人がいます。数の上では見えにくいだけで、あなたは一人ではありません。
なぜ、パートナーが見つかりにくいのか
恋愛も結婚もできます。それでも、現実には壁を感じます。その理由は、あなたの側ではなく、社会の側にあります。
- 性を前提とした結婚観: 「恋愛して、性的な関係を持って、結婚する」という筋書きが当たり前とされ、そこから外れると説明を求められます。
- 出会いの場の少なさ: 理解のある相手を自力で探すのは、時間も労力もかかります。
- 理解されにくさ: 一般的な婚活では、価値観を説明しても流されたり、断られたりすることがあります。
男性には、もうひとつ固有の壁があります。自認の遅れです。
「草食」「奥手」「恋愛下手」。こうした言葉で自分を説明してきた人ほど、本当の感覚に気づくのが遅れます。まわりからは「本気を出していないだけ」「いい人に出会えていないだけ」と言われ、自分でもそう思い込んでしまう。気づいたときには、何年も「うまくいかない自分」を責めてきた、というケースは少なくありません。
それは、責めるべき欠点ではありません。あなたに合った言葉と、合った探し方を、まだ知らなかっただけです。
性が苦手な人の、パートナーの探し方【4つの経路】
経路を選ぶ前に、簡単なセルフチェックをしてみてください。
- 性的な接触を考えると、気が重い・避けたい
- それでも、誰かと一緒に暮らしたい・人生を共にしたい
- 相手への恋愛感情は、ある(または、ありそう)
3つとも当てはまるなら、あなたはノンセクシャルに近い感覚かもしれません。もっと詳しく知りたいときは、セクシャリティ診断で傾向を確かめておくと、この後の経路も選びやすくなります。
そのうえで、いまのあなたの状況に近いものを選んでください。
| あなたの状況 | 向いている経路 |
|---|---|
| まず同じ感覚の仲間とつながりたい | ① 当事者コミュニティ |
| 恋愛感情があり、恋人から始めたい | ② マッチングアプリ |
| 恋愛にこだわらず、生活のパートナーがほしい | ③ 友情結婚 |
| 結婚を前提に、理解のある場で本気で探したい | ④ 理解のある結婚相談所 |
ひとつに絞る必要はありません。組み合わせて構いません。
① 当事者コミュニティ・交流会
同じ感覚の人と出会える場です。恋愛・結婚に直結するわけではありませんが、「自分だけじゃない」と知ることが、最初の安心になります。
アロマンティック・アセクシャル向けの交流会は、As Loop(アズループ)やにじいろ学校、プライドハウス東京などが定期的に開催しています。
向かない人 すぐに恋人・結婚相手がほしい人には、遠回りに感じることがあります。まずは仲間づくり・情報集めの場と考えてください。
② マッチングアプリ(プロフィールで公表する)
恋愛から始めたい人の選択肢です。多様な性のあり方に対応したアプリで、プロフィールに条件を書き、理解してくれる相手を募る使い方をします。最初に開示することで、価値観の合わない相手とのすれ違いを減らせます。
プロフィール文の例を挙げます。
「性的な関係を求めない、おだやかなパートナーシップを望んでいます。一緒にごはんを食べたり、休日を穏やかに過ごせる人と出会えたら嬉しいです」
条件と望む関係を、前向きに書くのがコツです公表する範囲は、知人に見られる可能性も含めて、あなたが負担なくできる程度で構いません。すべてを書く必要はありません。
向かない人 不特定多数とのやりとりが負担に感じる人には、消耗が大きい場です。少人数と深く話したいなら、次の③④のほうが合います。
③ 友情結婚という選択肢
恋愛や性愛を前提とせず、信頼と生活の協力でパートナーになる結婚の形です。「恋人」という枠にこだわらず、「一緒に暮らす相棒」を求める人に向いています。
仕組みや進め方は友情結婚とは?意味と仕組み、友情結婚の始め方ガイドで詳しく解説しています。
向かない人 恋愛感情のある関係を求める人には、物足りなさが残ることがあります。
④ 理解のある結婚相談所
結婚を前提に、本気で相手を探す場です。アセクシャルやノンセクシャルへの理解がある相談所なら、仲人が前提をわかったうえで相手を紹介してくれます。
たとえば友情結婚相談所カラーズは、恋愛・性愛を前提としない結婚を支援する相談所として知られています。
向かない人 費用をかけず、まず試したい人には、①②から始めるほうが負担が軽いです。
パートナーに、どう伝えるか
探し方と同じくらい大切なのが、「性が苦手であること」を相手にどう伝えるかです。ここでつまずく人が、とても多いからです。
伝えるタイミングは、相手を信頼できて、かつ関係が深まりすぎる前が目安です。後になるほど「なぜ早く言わなかったのか」という溝が生まれます。安全や心理的な負担に不安があるなら、一度ですべてを話す必要はありません。
切り出し方を、例で比べます。
「実は俺、ちょっと言いにくいことがあって……うまく言えないんだけど……」
NG例: あいまいで、相手を不安にさせます「恋愛の気持ちはちゃんとある。ただ、性的なことはあまり求めないタイプなんだ。そのうえで、あなたと一緒にいたいと思ってる」
OK例: 結論と気持ちが、はっきり伝わります伝える前に、自分の中で整理しておくと安心です。
- スキンシップ: どこまでなら心地よいか(手をつなぐ・ハグなど)
- 性的な関係: まったく望まないのか、状況によるのか
- 価値観の差: 相手に性的な欲求がある場合、どう折り合うか
- 子ども: ほしいか、その場合の方法をどう考えるか
- 将来の暮らし: 結婚・同居など、どんな生活を望むか
断られることもあります。それは、あなたが否定されたのではなく、価値観が合わなかっただけです。合わない相手と無理を続けるより、正直に伝えて合う人を探すほうが、長い目であなたを守ります。
よくある質問
Q: アセクシャルでも結婚できますか?
できます。恋愛感情や結婚願望を持つアセクシャルは珍しくありません。性愛を前提としない友情結婚や、理解のある結婚相談所など、当事者に合った道が複数あります。
Q: アセクシャルに恋愛感情はないのですか?
人によります。アセクシャルは「性的に惹かれない」ことを指す言葉で、恋愛感情の有無とは別です。恋愛をする人もしない人もいます。恋愛感情があり性的欲求がない人は、ノンセクシャルと呼ばれます。
Q: アセクシャルとノンセクシャルの違いは?
アセクシャルは「性的に惹かれない人」の広い総称です。日本では、そのうち「恋愛感情はあるが性的欲求はない人」を、とくにノンセクシャルと呼ぶ習慣が広まっています。恋愛をするかどうかが、区別の目安になります。
Q: アセクシャルは子どもをどうするのですか?
考え方は人それぞれです。子どもを望む場合、方法は性的な関係だけではありません。養子縁組や里親など、複数の選択肢があります。どれにも条件や負担があるため、希望や費用を早めにパートナーと話し合うことが大切です。望まない場合も、それはひとつの生き方です。結婚=子どもという前提を持つ必要はありません。
Q: アセクシャルの割合はどのくらいですか?
電通の2023年調査では1.56%、英国の大規模調査では約1%(100人に1人)という結果が出ています。見えにくいだけで、同じ感覚の人は各地にいます。
Q: 性的なことが苦手なのは「治す」べきものですか?
いいえ。アセクシャルは性的指向のひとつで、病気や障害ではありません。治療の対象ではなく、あなたという人の一部です。無理に「普通」へ合わせる必要はありません。
Q: 自分がアセクシャルかどうか、わからなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。ラベルを決めてから動く必要はありません。「性的なことは望まないが、恋愛や結婚はしたい」という感覚があれば、この記事の探し方はそのまま役に立ちます。とくに男性は「草食」「淡白」と言われて自認が遅れがちですが、焦って名前を決めなくてかまいません。
自分の傾向を知ることから始める
性が苦手なまま、誰かと生きていく。その道は、ちゃんとあります。順番はこうです。
- 自分の傾向を知る: 診断で、自分がどの感覚に近いかを言葉にする
- 一人じゃないと知る: 同じ感覚の人がいることを、数字とコミュニティで確かめる
- 合う探し方を選ぶ: コミュニティ・アプリ・友情結婚・相談所から、自分に合う経路を選ぶ
- 正直に伝える: 早めに、はっきりと、自分の気持ちと前提を相手に伝える
最初の一歩は、自分を知ることです。診断で見えた傾向は、これから誰かに「自分はこういうタイプだ」と伝えるときの言葉になります。


