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アロマンティック男性とは?特徴と自認の道筋

恋愛感情がわからない、付き合いたいと思えない——それはあなたが冷たいからでも奥手だからでもありません。アロマンティックという恋愛的指向があります。アセクシュアルやグレーロマンティックとの違い、男性が自認しにくい理由を、判断チャートと男性当事者の声で解説します。

Pace編集部
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恋愛の話題になると、どこか置いていかれる感覚があります。付き合っている人の「一緒にいるだけで幸せ」という言葉が、正直よくわかりません。性的な欲求はあるのに、誰かと恋人になりたいとは思えない——そのたびにあなたは、自分を「冷たい人間だ」「奥手なだけだ」「恋愛下手だ」と説明してきたのではないでしょうか。まわりからも「そのうち本気になれる人が現れる」と言われ続けてきたはずです。

冷たい・奥手・恋愛下手は、まわりやあなた自身が外から貼ったラベルにすぎません。誰かに恋愛的に惹かれないというその感覚には、アロマンティックという名前がついています。定義・アセクシュアルやグレーロマンティックとの違い・一時的な状態との見分け方、そして男性が自分の指向に気づきにくい構造まで、順を追って整理します。

アロマンティック男性の特徴と自認の道筋の解説

アロマンティックとは|恋愛的に惹かれない指向

アロマンティックとは、他者に恋愛的に惹かれない、または惹かれることがほとんどない恋愛的指向です。英語で「無い」を意味する接頭辞 a- と romantic(恋愛的な)を組み合わせた言葉で、日本では「Aロマンティック」と表記されたり、当事者のあいだで「アロマ」と略されたりします。

ここでいう恋愛的に惹かれるとは、特定の相手に対して恋愛的な高揚を感じ、恋人という関係を持ちたいと望むことを指します。アロマンティックの人は、この感覚がほとんど起こりません。人を好きになれないという意味ではなく、好意の向かう先が恋愛という形をとらない、と考えると整理しやすくなります。

誤解されやすいのは、愛情そのものが欠けているという見方です。アロマンティックの人にも、友人や家族への強い愛着があり、深い信頼関係を築きます。恋愛だけが人間関係の頂点ではないという前提に立つと、その関係の濃さが見えてきます。

もうひとつ重要なのが、恋愛的に惹かれることと性的に惹かれることは別の軸だという視点です。アロマンティックでも性的欲求がある人はいますし、恋愛的にも性的にも惹かれにくい人もいます。この2つを分けて捉える考え方はアセクシュアル・スペクトラムとはで詳しく整理しています。

アロマンティックは、惹かれるか惹かれないかの2択ではなく、グラデーションを持ちます。まれに惹かれるグレーロマンティック、強い絆を築いた相手にだけ惹かれるデミロマンティック、恋愛か友情かの区別自体がしっくりこないクワロマンティックなども、この大きな傘の中にあります。

「恋愛感情がわからない」の正体を見分ける【判断チャート】

恋愛感情がわからないという感覚は、必ずしもアロマンティックとは限りません。仕事や生活の忙しさ、心身の疲れ、過去のつらい経験によって一時的に惹かれにくくなることもあります。まず下のチャートで、自分がどの方向に近いか見当をつけてください。

恋愛感情がわからない・恋人になりたいと思えない恋愛的に惹かれた実感が薄い忙しさ・疲れ・過去の経験のあと以前は惹かれた記憶がある→ 一時的な状態の可能性恋愛的に惹かれた記憶がほぼ無い性的欲求の有無とは関係なく→ アロマンティック傾向まれに・深い絆の相手にだけ惹かれる頻度や条件が限られている→ グレー・デミロマンティック寄り好意はあるが恋愛か友情か区別できない区別する必要を感じない→ クワロマンティック寄り※複数が重なることもあります。無理にひとつへ絞る必要はありません。
「恋愛感情がわからない」背景を見分ける判断チャート(複数該当もあり得ます)

左端に近いなら、状況が変われば感じ方が動くこともあります。真ん中の「恋愛的に惹かれた記憶がほぼ無い」に近いなら、アロマンティックの視点で自分を見直す価値があります。頻度や条件が限られているだけならグレーロマンティックとはデミロマンティックとは、恋愛か友情かの線引きそのものに違和感があるならクワロマンティックとはで近い感覚を整理しています。

アロマンティック・グレー・デミ・クワロマンティックの違い【徹底比較】

恋愛的に惹かれにくい指向は名前が似ていて混乱しやすいため、軸をそろえて比較します。自分がどこに近いかを見つけてください。

指向恋愛的に惹かれるか惹かれる頻度・条件性的に惹かれるか
アロマンティックほとんど惹かれない条件が整っても生じにくい人による(あることも)
グレーロマンティックごくまれに惹かれるまれ、または特定状況人による
デミロマンティック惹かれる強い感情的な絆を築いた後人による
クワロマンティック区別がつかない恋愛と友情の線引き自体が曖昧人による
リスロマンティック惹かれる相手に返してほしくない人による

アロマンティックは、恋愛的な惹かれがそもそも生じにくい点で他と異なります。グレーロマンティックは「まれにある」、デミロマンティックは「条件つきである」という違いがあり、線を引くとしたらここです。どれもきれいに分かれるものではなく、複数にまたがる人もいます。ラベルは自分を縛るためではなく、自分を説明する道具として使ってください。

性的に惹かれる側の軸が気になる場合は、頻度が低いグレーセクシュアルや、親密になるほど惹かれが薄れるフレイセクシャルもあわせて確認すると、自分の位置がはっきりします。

アセクシュアルとの違い|恋愛の惹かれと性の惹かれは別の軸

アロマンティックと最も混同されやすいのがアセクシュアルです。アロマンティックは恋愛的に惹かれない指向、アセクシュアルは性的に惹かれない指向で、そもそも軸が違います。

この2つは重なることも、片方だけのこともあります。恋愛的にも性的にも惹かれない人は「アロマンティック かつ アセクシュアル」と重ねて表現し、アロエース(aroace)と呼ばれることもあります。一方で、性的欲求はあるのに恋人になりたいとは思わない人もいます。この組み合わせは男性に多く見られながら、言葉にされにくい領域です。

「セックスはしたくても、付き合いたいとは思わないという感覚は『ある』」

出典: はてな匿名ダイアリー「男のアロマンティックについてここに記す」(30代男性)

この感覚を「体だけが目的の不誠実な男」と自分で断じてしまう人がいます。性的欲求と恋愛的な惹かれが別々に動いているだけであり、人格の問題ではありません。恋愛的な惹かれはあるのに性的に惹かれにくい、という逆の組み合わせもあり、それは恋愛感情はあるけど性欲がない状態で整理しています。アセクシュアルの側から恋愛の可能性を整理したアセクシャルは恋愛できるのかや、定義をまとめたアセクシュアルとはもあわせて読むと、2つの軸の関係が立体的に見えてきます。

なぜ男性はアロマンティックに気づきにくいのか

恋愛的に惹かれない男性は、自分の指向にたどり着くまでに長い時間がかかります。理由は3つあります。

  • 「男は恋愛に前のめりであるはず」という社会的前提: この前提に照らすと、恋人をほしいと思わない自分が「冷たい」「男らしくない」に見え、感覚を正直に見つめるのが難しくなります。前提そのものが多様な恋愛のあり方を無視しています。
  • 性欲があると恋愛感情もあるとみなされる: 男性は特に、性的欲求の有無で恋愛感情の有無まで判断されがちです。性欲があるという理由だけで「恋愛感情もあるはずだ」と本人まで思い込み、恋愛的指向という別の軸に気づく機会が失われます。
  • 自認を語る発信が女性に偏っている: アロマンティックを語る記事や体験談の多くは女性の書き手によるもので、男性が自分と重ねられる言葉に出会いにくい状況があります。実際、男性当事者は「アロマンティックを自認する発信の殆どが女性」だと指摘しています。

3つ目は、この指向の解説記事を横断して読むとはっきり見えます。主要な解説記事のほとんどは性別に触れない中立的な書き方で、男性の事例が登場しません。男性が自分の話として読める入り口が、そもそも用意されていないのです。

言葉との出会いが自認の入り口になることは、当事者の記録からもうかがえます。

「その時の安心感は途轍もないものでした。自分一人がおかしいのではなく、世の中には自分と同じように恋愛感情がない人たちもいると知り、絶望感が薄れたのです」

出典: note「恋愛感情が無いと自覚した時の話(アロマンティック・アセクシャル)」

数のうえでも、あなたは例外ではありません。電通グループが2023年に6,240人を対象に実施した調査では、アロマンティックに該当する人は1.43%と報告されています(電通LGBTQ+調査2023)。約70人に1人という割合で、学校のクラスや職場のフロアに必ず数人はいる計算です。同じ誤認の構造は自分のセクシャリティがわからない男性へアセクシャル男性の特徴と自認方法ノンセクシャル男性が気づきにくい理由でも掘り下げています。

自分がアロマンティックかも?セルフチェック

以下の項目を確認してみてください。全てが当てはまらなくても問題ありません。

  • 誰かに恋愛的に惹かれた、と確信できる記憶がない
  • 友人の恋バナに合わせて相づちを打つが、実感はともなわない
  • 「一緒にいるだけで幸せ」という感覚が理解できない
  • 恋人がほしいというより、性的欲求だけが独立して存在している
  • 恋愛映画やドラマの告白シーンで、その後の関係の意味がわからない
  • 「冷たい」「奥手」「恋愛下手」と自分や他人から評価されてきた
  • 「いい人に出会えば変わる」と言われても、しっくりこない

複数当てはまるなら、アロマンティックの傾向があります。ただしこれは目安です。セクシャリティは自分自身が感じ取るものであり、チェックの数で決まるものではありません。自覚が進む過程はアセクシャルの自覚の進み方、迷いが続くときの整理はクエスチョニングの恋愛の悩みが参考になります。

周囲やパートナーへどう伝えるか【NG例・OK例】

恋愛的に惹かれないことを打ち明けると、「運命の人に出会っていないだけ」「今は疲れているだけ」と流されがちです。伝え方を工夫すると、この流され方をかなり減らせます。

  • NG例:「恋愛とか、あんまり興味なくて」→ 一時的な気分の話として受け取られ、「そのうち変わる」で会話が終わります。
  • OK例:「恋愛的に人を好きになる感覚が、もともと自分にはほとんどないみたいなんだ。アロマンティックという言葉で説明されている感じ方だよ」→ 気分ではなく指向の話であることが伝わります。
  • 相手が恋人の場合のOK例:「君を大切に思う気持ちは本当だよ。ただ、恋愛的な高揚という形ではそれが出てこないんだ」→ 大切に思う気持ちと恋愛的な惹かれを切り分けて伝えられます。

伝える相手やタイミングは自分で選んでかまいません。カミングアウトは義務ではなく、黙っている選択も等しく尊重されます。恋愛の熱量に頼らない関係を望むなら、友情結婚とは?意味と仕組み恋愛感情がないけど結婚したい人へで、恋愛を前提としないパートナーシップの形を確認できます。

よくある質問

Q: アロマンティックとアセクシュアルは何が違いますか?

軸が違います。アロマンティックは恋愛的に惹かれない指向、アセクシュアルは性的に惹かれない指向です。恋愛的にも性的にも惹かれない人はアロエース(aroace)と呼ばれ、恋愛的には惹かれないのに性的欲求はある人もいます。定義の詳細はアセクシュアルとはで解説しています。

Q: 性欲があるのにアロマンティックだと名乗っていいのですか?

名乗ってかまいません。性的欲求の有無はアロマンティックかどうかの判断に関係しません。恋愛的な惹かれと性的な惹かれは別々に動くもので、性欲があるまま恋愛的には惹かれない人は実際にいます。この組み合わせは男性に多いにもかかわらず語られる機会が少なく、そのために自分だけが異常だと感じてしまう人がたくさんいます。

Q: 恋愛経験がないだけで、経験すれば変わるのではないですか?

経験の有無とは別の話です。交際してから自分の感覚に気づく人もいれば、交際経験がないまま自認する人もいます。「経験すればわかる」という助言は、恋愛的な惹かれが誰にでも備わっている前提に立っており、その前提自体が正しくありません。ただし、まだ整理がついていない段階なら、無理にラベルを確定させる必要もありません。

Q: アロマンティックでも結婚やパートナーシップはできますか?

できます。恋愛的な高揚に頼らず、信頼や生活の相性を土台に関係を築く人はいます。恋愛感情を前提としない結婚の形は友情結婚とは?意味と仕組み、性的な関係を前提としない結婚についてはノンセクシャルの結婚で具体的に整理しています。

Q: アロマンティックは治りますか・変わりますか?

治すという前提が誤りです。アロマンティックは病気でも障害でもなく、恋愛的指向の一つです。「冷たいだけ」「そのうち変わる」と言われ続けてきたとしても、あなたの感覚はあなたのものです。感じ方が時間とともに動く人もいますが、それは治療の結果ではなく自然な揺らぎです。

Q: 自分がアロマンティックかどうか、はっきり決めないといけませんか?

決めなくても大丈夫です。ラベルは自分を縛るためではなく、自分を理解して楽になるための道具です。「アロマンティックかもしれない」という状態のまま過ごしてもかまいません。迷いを言葉にする手がかりとして、セクシャリティ診断を使うところから始められます。

恋愛を前提にしない人生を、自分で組み立てる

恋愛的に惹かれないことは、欠落でも未熟さでもありません。あなたの惹かれ方が、社会が当たり前とみなす形と違う場所にある、というだけです。

冷たい・奥手・恋愛下手という他称を脱いで、自分の感覚に合う言葉を持つことが最初の一歩です。言葉を持つと、まわりの期待に流されず、友情・仕事・生活のパートナーシップといった自分にとって意味のある関係に力を注げるようになります。「自分はどこかおかしいのでは」という漠然とした不安も薄れていきます。

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