自分のセクシャリティがわからない男性へ|気づけない理由と診断
草食系・奥手と言われてきた男性が、実はアセクシャルやノンセクシャルだったケースは少なくありません。男性がセクシャリティに気づきにくい3つの構造的な理由と、主なセクシャリティの種類の違いを比較表で整理します。まず診断で自分の傾向を言葉にしてみましょう。
「草食系だから」「奥手なだけ」「本気を出せば変わる」。そう言われ続けてきたなら、それはあなた自身の言葉ではなく、まわりが貼り続けたラベルかもしれません。
自分のセクシャリティがわからない——その感覚を持っている男性は、思っているより多くいます。ただ、男性はその感覚を話し合える場があまりありません。だから「自分だけ」と思いやすいのです。
この記事では、男性がセクシャリティに気づきにくい理由と、自分の傾向を確かめる方法を整理します。
男性がセクシャリティに気づきにくい3つの理由
男性のアセクシャルやノンセクシャルの当事者が少ないわけではありません。電通グループが20〜59歳の5万7500人を対象に行った調査では、アセクシャルに該当する人が日本の人口の1.56%と報告されています(電通グループ LGBTQ+調査2023)。英国の大規模調査でも、性的に惹かれた経験がない人は約1%(100人に1人)とされています。
見えにくいだけで、同じ感覚を持つ男性は各地に存在します。
① 「男は性欲が強いもの」という前提が自問を妨げる
日本社会には「男性は性的な関係を積極的に求めるものだ」という暗黙の前提があります。この前提の中では、他者に性的に惹かれない男性は「おかしいのかもしれない」と感じやすい。
自分の感覚を疑うのではなく、社会の規範を疑う視点が必要です。性的に惹かれないことは、欠陥でも病気でも、努力不足でもありません。
② 「草食系・奥手」という他称が自認を先送りさせる
「草食系だから」「奥手なだけ」「いい人に出会えていないだけ」——こうした言葉を受け入れてしまうと、自分の感覚が「一時的なもの」として片づけられます。
草食系は「恋愛行動が消極的な男性」を外から表現するラベルです。アセクシャルやノンセクシャルは「他者に性的に惹かれない」という内的な感覚です。この2つは本質的に異なります。
草食系と言われ続けてきた男性の中に、アセクシャルやノンセクシャルの当事者が含まれているケースは少なくありません。
③ セクシャリティを話せる場が男性には少ない
女性と比べて、男性はセクシャリティや恋愛の感覚を安心して話し合える場が限られます。「性について話す=積極的であること」というイメージが強く、「性に関心がない」という感覚を打ち明けにくい文化があります。
アセクシャルやノンセクシャルという言葉を知らないまま、「自分は何かが違う」という違和感を何年も抱え続ける男性は少なくありません。
主なセクシャリティの種類と特徴
セクシャリティには「性的に誰かに惹かれるか」と「恋愛感情を誰かに抱くか」の2つの軸があります。この2軸を分けて考えることで、自分の感覚に近い言葉が見えやすくなります。
| 用語 | 性的指向 | 恋愛的指向 | 男性当事者の感覚例 |
|---|---|---|---|
| アセクシャル | 他者に性的に惹かれない | 人によって異なる | 「性的な話題に関心が持てない」「性行為に必要性を感じない」 |
| ノンセクシャル | 他者に性的に惹かれない | 恋愛感情はある | 「恋愛はしたいが、性的なことは気が重い」 |
| グレーアセクシャル | めったに・弱く惹かれる | 人によって異なる | 「まれに惹かれる気持ちはあるが、ほとんどない」 |
| アロマンティック | 人によって異なる | 他者に恋愛感情を抱かない | 「性的に惹かれることはあるが、恋愛感情が持てない」 |
どれがしっくりくるかは、個人の感覚によります。どれかに完全に当てはまらなければならない、ということはありません。
各セクシャリティの詳しい定義は、アセクシャルとは?定義と他との違い、ノンセクシャルとは?アセクシャルとの違い、デミロマンティックとは?特徴・デミセクシュアルとの違いを解説でまとめています。
自分の傾向を確かめる8つのサイン
以下のチェックリストをみてください。該当する項目が多い場合、アセクシャルやノンセクシャルの傾向がある可能性があります。
- 他者を見て「性的に魅力的だ」と感じることがほとんどない
- 性的な話題や性的なコンテンツへの関心が薄い、または必要性を感じない
- 「草食系」「奥手」と言われてきたが、そのラベルはしっくりこない
- 交際相手や周囲から「もっと積極的になれ」「性欲がないのはおかしい」と言われたことがある
- 性的な接触を求められると、重さや苦痛を感じることがある
- 性的な関係がなくても、誰かと一緒にいること自体に満足できる
- 「いつか変わる」「本気になれば欲求が出てくる」という言葉に、ずっと疑問を感じてきた
- 自分と周囲の男性との感覚の違いを、ずっと「なんとなく変だ」と感じてきた
「わからない」ままでいい理由
セクシャリティは、無理に決めるものではありません。「自分がどれかわからない」は、むしろ正直な状態です。
クエスチョニングという選択肢
自分のセクシャリティについて疑問を持ちながら探索している状態を、「クエスチョニング」と呼びます。LGBTQ+の「Q」の一つです。
クエスチョニングは「途中状態」ではなく、それ自体がひとつのセクシャリティのあり方です。「決めなければならない」という焦りは必要ありません。
ラベルより先に感覚を大切にする
「アセクシャル」「ノンセクシャル」という言葉は、自分を理解するための道具です。言葉が先にあるのではなく、あなたの感覚が先にあります。
「性的なことが苦手」「性的欲求が薄い」という感覚は、ラベルが見つかる前から有効です。自分の感覚はあなたのものです。
よくある質問
Q: 自分のセクシャリティがわからないのは普通ですか?
珍しくありません。セクシャリティは複数の軸で構成されており、単純に分類できない場合も多くあります。自分のセクシャリティに迷う時期があることは、特別なことではありません。
Q: 草食系とアセクシャルはどう違いますか?
草食系は「恋愛や性的行動に消極的な男性」を外から表現する社会的なラベルです。アセクシャルは「他者に性的に惹かれない」という内的なセクシャリティを指します。草食系と言われてきた男性の中に、アセクシャルやノンセクシャルの当事者が含まれているケースは少なくありません。
Q: セクシャリティは時期によって変わることがありますか?
変わることもあります。思春期や恋愛経験、年齢によって感覚が変化したと感じる人はいます。ただし、変わらない人もいます。「いつか変わる」という言葉は、当事者の感覚を否定することになりやすいため、その言葉をそのまま受け取る必要はありません。
Q: ゲイかどうかわからない場合、どう確かめればいいですか?
「男性に性的に惹かれることがあるかどうか」が一つの目安です。ただし、自分の感覚を言葉にするのは簡単ではありません。セクシャリティ診断で傾向を言葉にするところから始めると、整理しやすくなります。
Q: セクシャリティがわからないまま恋愛・結婚はできますか?
できます。ラベルが決まる前から、あなたの感覚は有効です。「性的なことが苦手」「恋愛はしたい」という感覚があれば、それをベースに相手を探すことができます。パートナー探しの方法はアセクシャルの恋愛と結婚|パートナーの探し方で詳しく解説しています。
Q: 自分がアセクシャルかノンセクシャルかどちらかわかりません
どちらかを決める必要はありません。日本ではとくに「恋愛感情はあるが性的欲求を持たない人」をノンセクシャルと呼ぶ習慣があります。アセクシャルの中にノンセクシャルが含まれることも多く、どちらの言葉がしっくりくるかは個人の感覚によります。詳しくはアセクシャル男性の特徴と自認方法で整理しています。
Q: 相談できる場所はありますか?
よりそいホットライン(0120-279-338、ガイダンス4番、24時間・無料)はLGBTQ+当事者向けの相談窓口です。一人で抱えているなら、電話してみてください。また、JobRainbowのセクシャリティ診断でも、自分の傾向を言葉にするヒントが得られます。
自分の感覚を言葉にする最初の一歩
「自分のセクシャリティがわからない」は、出発点として十分です。ラベルを決める必要はありません。今の自分の感覚を言葉にするところから始めましょう。
- 診断を使ってみる: 自分の傾向を言葉にするヒントになります
- 近い言葉を探す: アセクシャル・ノンセクシャル・グレーアセクシャルの解説を読む
- 仲間の声に触れる: あるある記事でも、同じ感覚の人がいることを確かめられます


