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リスセクシュアルとは?惹かれても返されたくない

他者に性的に惹かれるのに、その気持ちを相手から返されると冷めてしまう。それはあなたが身勝手なのでも臆病なのでもなく、リスセクシュアルという性的指向かもしれません。リスロマンティックやフレイセクシュアルとの違い、性嫌悪との見分け方、男性が気づきにくい理由を判断チャートと解説します。

Pace編集部
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好きな人に性的に惹かれることはあるのに、相手からその気持ちを返されたり、性的な目で見られたりすると、すっと冷める・気まずくなる・逃げ出したくなる——そのたびに、あなたは「自分は身勝手だ」「相手を大事にできない」「臆病な男だ」と自分を責めてきたのではないでしょうか。まわりからも「付き合っているのにおかしい」「意気地がない」と言われてきたかもしれません。ですが、身勝手・臆病・意気地なしという言葉は、まわりやあなた自身が外から貼ったラベルにすぎない可能性があります。

惹かれても、それを相手から返されたくないというその感覚には、リスセクシュアル(リソセクシュアル)という名前がついています。定義・リスロマンティックやフレイセクシュアルとの違い・性嫌悪や過去の経験との見分け方、そして男性が自分の指向に気づきにくい理由まで、順を追って整理します。

リスセクシュアルという性的指向とその特徴の解説

リスセクシュアルとは

リスセクシュアルとは、他者に性的に惹かれることはあるのに、その性的な惹かれを相手から返されたい・応えられたいとは思わない性的指向です。リソセクシュアル(Lithosexual)やアコイセクシュアル(Akoisexual)とも表記され、いずれもほぼ同じ意味で使われます。名前の「リス(lith)」は、ギリシャ語で「石」を意味する言葉が由来です。

具体的には、相手に性的に惹かれても関係が一方通行のままでいたい、相手から性的に惹かれ返されると気持ちが冷める、性的な目で向けられると不快感や嫌悪感を抱く、といった感じ方が当てはまります。惹かれること自体はあるのに、それが「返ってくる」局面で気持ちが引いてしまうのが特徴です。反応の強さは人によって幅があり、ひとつの決まった形があるわけではありません。

大切なのは、相手が嫌いだから冷めるのではないという点です。「本気じゃないだけ」「相手を選んでいる」という指摘は的外れで、好意や信頼の大きさとは別に、性的な惹かれを返される場面そのもので気持ちが引く指向だと考えると整理しやすくなります。リスセクシュアルでも人を深く大切にできますし、性的な関係に頼らない形で強い絆を結ぶこともできます。

もうひとつ理解の助けになるのが、性的に惹かれることと恋愛的に惹かれることは別だという視点です。リスセクシュアルの人が恋愛的には人並みに惹かれることもあれば、恋愛的にも惹かれにくいこともあります。性的な惹かれと恋愛的な惹かれを分けて捉える視点は、アセクシュアル・スペクトラムとはでも詳しく整理しています。

一時的な経験・フレイ・アセクとの見分け方【判断チャート】

「惹かれても返されたくない」という感覚は、リスセクシュアルとは限りません。過去の経験や性被害の影響、相手と深まる過程での変化、あるいは別の指向であることもあります。まず下のチャートで、自分がどの方向に近いか見当をつけてください。

性的に惹かれるのに、返されると冷める・引く惹かれが返る局面で気持ちが引く過去の経験・被害の影響があるつらい経験がきっかけと感じる→ 経験・ケアの問題返される・応えるのを望まない一方通行なら心地よい→ リスセクシュアル傾向親密になるほど惹かれが薄れる距離が近づくと気持ちが消える→ フレイセクシュアル寄りそもそも性的にほぼ惹かれない返す・返さない以前に惹かれない→ アセクシュアル寄り※複数が重なることもあります。無理にひとつへ絞る必要はありません。
「惹かれても返されたくない」背景を見分ける判断チャート(複数該当もあり得ます)

左の「過去の経験・被害の影響がある」に近いなら、それは性的指向というより経験やケアの問題で、専門の窓口で相談できる領域です。真ん中の「返される・応えられるのを望まず、一方通行なら心地よい」に近いなら、リスセクシュアルの視点で自分を見直す価値があります。右寄りの「親密になるほど惹かれが薄れる」ならフレイセクシュアルとは、「そもそも性的にほとんど惹かれない」ならアセクシャルとはで近い感覚を整理しています。

リスセクシュアル・フレイセクシュアル・アセクシュアルの違い【徹底比較】

似た言葉が多いため、性的に惹かれにくい・惹かれ方に条件がある指向を比較表で整理します。リスセクシュアルの位置がはっきりします。

指向性的に惹かれるか惹かれが引く・薄れるきっかけ恋愛的な惹かれ
リスセクシュアル惹かれる相手から性的に返される・応えを求められると人による
フレイセクシュアル惹かれる相手と親密・深い関係になると人による
デミセクシュアル深い絆を築くと惹かれる(薄れるより、惹かれる条件が「絆」)人による
アセクシュアルほとんど惹かれない(もともと惹かれにくい)人による

リスセクシュアルは、性的に惹かれること自体はある点で、もともと惹かれにくいアセクシュアルとは異なります。また、フレイセクシュアルが「関係が深まること」で惹かれが薄れるのに対し、リスセクシュアルは「相手から惹かれ返されること」で気持ちが引く、というきっかけの違いがあります。惹かれが親密さの中で消えていく感覚が強いならフレイセクシュアルとは、強い絆を築いた相手にだけ惹かれるならデミセクシャルとはで詳しく解説しています。

リスロマンティックとの違い|性的な惹かれと恋愛的な惹かれは別

リスセクシュアルとよく混同されるのが、リスロマンティックです。リスセクシュアルは性的な惹かれを返されたくない指向、リスロマンティックは恋愛的な惹かれを返されたくない指向で、軸が違います。

人の惹かれ方は、性的な惹かれと恋愛的な惹かれという2つの軸で捉えると整理できます。性的には返されたくないのに恋愛的には両想いを望む人もいれば、その逆もいます。両方とも返されたくないなら「リスセクシュアル かつ リスロマンティック」と重ねて表現できますし、片方だけ当てはまる人もいます。自分の場合はどちらの惹かれを返されたくないのかを分けて見ると、自己理解が進みます。

恋愛的な惹かれを返してほしくない感覚はリスロマンティックとはで整理しています。性愛の軸だけでなく恋愛の軸も気になるなら、あわせて読んでみてください。

なぜ男性はリスセクシュアルに気づきにくいのか

性的に惹かれても返されたくない男性は、自分の指向に気づくまでに時間がかかりがちです。理由は3つあります。

  • 「男は性的に積極的であるはず」という社会的前提: この前提に照らすと、惹かれ返されると引いてしまう自分が「意気地がない」「男らしくない」に見え、正直に自分を見るのが難しくなります。前提そのものが多様な性のあり方を無視しています。
  • 「奥手」「臆病」「ヘタレ」という便利な他称: これらの言葉に収まっている間は、感覚を深掘りする必要がなく、本当の指向への気づきが先送りになります。
  • 自認するための言葉を知らない: リスセクシュアルという言葉を知らなければ、自分の感覚を照らし合わせるものがありません。実際、当事者も言葉との出会いをきっかけに自分を理解し始めています。

言葉を知らないまま、この感覚を「治すべき欠点」と捉えてしまう人は少なくありません。当事者の声からも、その苦しさがうかがえます。

「私の悩みはリスセクシュアル気味であるところを治したいと思っています」

出典: Yahoo!知恵袋(セクシュアリティについての質問)

「治したい」と感じるほど自分を責めてしまうのは、この感覚を説明する言葉に出会えていないからでもあります。電通グループが2023年に全国20〜59歳の約5万7,500人を対象に実施した調査では、アセクシャルに該当する人は1.56%と報告されています(電通LGBTQ+調査2023)。リスセクシュアルはこのアセクシュアル・スペクトラム上の一点にあたり、性的に惹かれても返されたくない感覚を持つ人は確かに存在します。この誤認の構造は自分のセクシャリティがわからない男性へアセクシャル男性の特徴と自認方法でも掘り下げています。

自分がリスセクシュアルかも?セルフチェック

以下の項目を確認してみてください。全てが当てはまらなくても問題ありません。

  • 相手に性的に惹かれることはあるのに、返されると急に冷める
  • 性的な目で見られると、不快感や気まずさを感じる
  • 一方通行の状態のほうが、むしろ心地よいと感じる
  • 「本気じゃない」「意気地がない」と自分を評価してきた
  • 相手を嫌いになったわけではないのに、距離を取りたくなる
  • この感覚を「治さないといけない」と思ってきた

複数当てはまるなら、リスセクシュアルの傾向がある可能性があります。ただしこれはあくまで目安です。セクシャリティは自分自身が感じるものであり、チェックの数で決まるものではありません。似た感覚は性に淡白な人の恋愛についてアセクシャルの自覚の進み方でも整理しています。

パートナーへどう伝えるか【NG例・OK例】

リスセクシュアルは、パートナーを傷つけないか不安になりやすい指向です。返されると引いてしまうことを「あなたに気持ちがない」と誤解されるのを恐れて、言い出せない人もいます。大切なのは、相手を大切に思う気持ちは変わらないことをセットで伝えることです。

  • NG例:「なんか、そういう雰囲気になると無理で……」→ 理由が伝わらず、相手は「自分に魅力がないのか」と受け取りがちです。
  • OK例:「君に惹かれていないわけじゃないんだ。ただ、こっちに性的に向けられると気持ちが引いてしまう体質みたいで。君を大切に思う気持ちとは別の話なんだ」→ 指向であること、大切に思う気持ちは変わらないことが同時に伝わります。

性的な関係の温度差をどうすり合わせるかは、関係を続けるうえで避けて通れません。性愛を前提としない関係の築き方はセックスしたくないけど結婚したい人へ友情結婚とは?意味と仕組みでも紹介しています。

よくある質問

Q: リスセクシュアルとリスロマンティックはどう違いますか?

軸が違います。リスセクシュアルは「性的に惹かれるが、それを相手から返されたくない」性的指向、リスロマンティックは「恋愛的に惹かれるが、それを相手から返されたくない」恋愛的指向です。性的な惹かれと恋愛的な惹かれは別の軸で動くため、両方に当てはまる人も、片方だけの人もいます。恋愛の軸はリスロマンティックとはで解説しています。

Q: リスセクシュアルは性嫌悪と同じですか?

同じではありません。リスセクシュアルは性的に惹かれること自体はあり、それが「返される」局面で気持ちが引く指向です。一方、性嫌悪は性的なことそのものへの強い拒否感を指し、原因も別にあります。ただし、返されることへの嫌悪が過去の性被害やつらい経験と結びついている場合は、指向として片づけず、専門の窓口でケアを受けられます。

Q: リスセクシュアルでも恋愛や結婚はできますか?

できます。リスセクシュアルは性的な惹かれを返されたくないだけで、恋愛感情や結婚願望とは別の話です。恋愛的に惹かれる相手と交際・結婚する人もいますし、性的な関係に頼らず信頼や生活のパートナーシップを土台に関係を築く人もいます。恋愛や性愛を前提としない関係の形は友情結婚とは?意味と仕組みでも紹介しています。

Q: 相手から惹かれると冷めるのは、ただの気まぐれや本気じゃないだけでは?

気まぐれとは異なります。「本気になればそうならない」という指摘は的外れで、好意や信頼の大きさとは別に、性的な惹かれを返される場面そのもので気持ちが引く指向です。相手を選んでいるのでも、本気度が足りないのでもなく、惹かれが返る局面で反応が起きる、と考えると整理できます。

Q: リスセクシュアルは治りますか・変わりますか?

治すという前提が誤りです。リスセクシュアルは病気や障害ではなく、性的指向の一つです。「意気地がないだけ」「そのうち変わる」と言われ続けてきたとしても、あなたの感覚はあなたのものです。無理に矯正する必要はありません。感じ方が時間とともに変化する人もいますが、それは治療の結果ではなく自然な揺らぎです。

Q: 自分がリスセクシュアルかどうか、はっきり決めないといけませんか?

決めなくても大丈夫です。セクシャリティのラベルは、自分を縛るためではなく、自分を理解し楽にするための道具です。「リスセクシュアルかもしれない」という状態のまま過ごしてもかまいません。迷いを言葉にする手がかりとして、セクシャリティ診断を使ってみるのもおすすめです。

自分の感覚を、言葉にすることから始める

惹かれても返されたくないことは、身勝手でも欠陥でもありません。あなたの惹かれ方が、社会が想定する「普通」と少し違う場所にある、というだけです。

意気地がない・臆病・ヘタレという他称を脱いで、自分の感覚に合う言葉を探すことが最初の一歩です。言葉を持つと、まわりの期待に流されず、自分のペースでパートナーとの関係を選べるようになります。「自分はどこかおかしいのでは」という漠然とした不安も薄れていきます。

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