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【2026年版】パートナーシップ制度のメリット・デメリット

パートナーシップ制度を使うべきか迷う同性カップルへ。登録するメリット・デメリット、同性婚・事実婚との違い、相続や税金で補う法的手段まで整理しました。あなたの暮らしに合わせた判断基準で解説します。2026年時点で530を超える自治体が導入済みです。

Pace Magazine 編集部
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パートナーシップ制度は「登録すれば結婚に近い扱いを受けられる」と思われがちですが、実際には法的な効力がなく、住んでいる自治体から引っ越すと効果が消えます

一方で、公営住宅の入居、病院での面会、携帯電話の家族割など、日常生活でそれなりに効くメリットもあります。登録すべきかどうかは、あなたの暮らしの優先順位で決まります。

2026年時点の最新データで整理すると、受けられるメリットは7つ、デメリットは5つ。さらに相続や税金の不利を補うための法的手段が4つあります。あなたの暮らしで何が優先かによって、登録すべきかどうかの答えは変わります。

二人で書類を確認する同性カップル

パートナーシップ制度とは?3分でわかる基本

パートナーシップ制度とは、自治体が同性カップル(または事実婚カップル)を「パートナー関係にある」と公的に認め、証明書を発行する制度です。婚姻届ではないため法律上の「夫婦」にはなりませんが、自治体が管轄する行政サービスや、証明書を受け入れる民間サービスで「家族」として扱われるようになります。

2026年時点の導入状況

最新データ
  • 導入自治体数: 530自治体(2025年5月末時点、渋谷区・NPO法人虹色ダイバーシティ共同調査)
  • 人口カバー率: 92.5%
  • 登録件数: 累計9,836組
  • 100%カバー達成の都道府県: 33都府県

調査開始の2017年と比べて、自治体数は約88倍、登録件数は約102倍に拡大しました。最新の一覧はみんなのパートナーシップ制度で確認できます。

渋谷区と世田谷区が2015年11月に日本で初めて導入し、その後10年で全国に広がりました。あなたが住んでいる自治体が未導入でも、近隣の政令指定都市や県庁所在地はほぼ導入済みです。

渋谷型と世田谷型の2つのモデル

自治体によって制度の「重さ」が大きく違います。

渋谷区型(条例型)
  • 議会の条例として制定。宣誓だけでなく公正証書の作成が必要
  • 費用目安: 約6万円(公正証書2通分)
  • 実効性がやや強く、差別禁止の規定が明文化されている自治体もある
世田谷区型(要綱型)
  • 自治体の要綱として運用。宣誓書と本人確認書類のみ
  • 費用: 基本無料(住民票・戸籍謄本の発行手数料程度)
  • 手続きが軽い分、導入する自治体が多い

ほとんどの自治体は世田谷型(要綱型)を採用しています。詳しい自治体別の仕組みはMarriage For All Japanの自治体データベースで確認できます。


パートナーシップ制度の7つのメリット

1. 公営住宅に「家族」として入居できる

都道府県営・市営の公営住宅は原則として「親族」しか入居できませんが、パートナーシップ証明書があれば家族として申し込めます。収入要件をクリアすれば、家賃3〜5万円台の住まいを2人で確保できます。

2. 病院で面会・手術同意書の署名ができる

2人のどちらかが緊急搬送されたとき、この違いは決定的です。

3. 携帯電話の家族割・家族カードが使える

ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルはいずれも同性パートナーの家族割を認めています。証明書の提示または自己申告で適用され、2回線で月1,500〜3,000円ほど安くなります。

家族カードは三井住友、楽天カード、イオンカードなどで発行可能です。

4. 生命保険の受取人にパートナーを指定できる

多くの生命保険会社(ライフネット生命は2015年から、第一生命・日本生命・アフラックなどは2016〜2017年にかけて対応)が同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定できるようになりました。会社によってはパートナーシップ証明書の提示を求められます。

パートナーシップ制度を使わない場合、同性パートナーを受取人にするには「互いの戸籍謄本」や「同居の事実証明」などを追加で提出する必要があります。

5. 勤務先の慶弔休暇・扶養手当を申請しやすくなる

サントリーグループ、KDDI、楽天、ソニー、ミクシィ、リブセンスなど、同性パートナーに結婚祝金や忌引休暇を認める企業が増えました。日本経済団体連合会(経団連)会員企業でも導入は広がっています。

勤務先の規定によっては「パートナーシップ証明書の提示」が申請条件となっています。証明書がないと申請しても受理されないケースがあるため、就業規則を事前に確認しましょう。

6. 賃貸物件の契約で「家族」として審査される

パートナーシップ証明書を提示すると、賃貸審査で「2人入居可・家族」として扱われる物件が増えます。LGBTQフレンドリーな不動産会社では、証明書がなくても対応してくれますが、ない場合は同性カップルの賃貸部屋探しガイドで紹介しているコツが有効です。

7. 災害時の見舞金・弔慰金の対象になる

自治体の災害弔慰金は「配偶者・親族」を対象にしますが、パートナーシップ制度の利用者も同等に扱う自治体が増えています。犯罪被害者遺族給付金も同様です。

病院で手を握り合うカップル


パートナーシップ制度の5つのデメリット

メリットだけを見て登録すると、あとで「こんなはずじゃなかった」となります。法的効力がないことによる限界を正しく理解しておきましょう。

1. 法的効力がない(婚姻ではない)

パートナーシップ制度は自治体の証明にすぎず、法律上の夫婦にはなりません。戸籍にも記載されず、法定相続人にもなりません。「事実婚以下、結婚未満」のポジションです。

2. 相続権がない(遺言書がないと遺産を受け取れない)

これが最も重いデメリットです。配偶者なら自動的に遺産の2分の1以上を相続しますが、パートナーシップ制度のパートナーは法定相続人ではないため、遺言書がなければ1円も受け取れません。

3. 税法・社会保険の「配偶者」扱いにならない

パートナーシップ証明書を持っていても、次の国の制度はいずれも対象外です。

  • 所得税の配偶者控除・配偶者特別控除: 適用なし
  • 相続税の配偶者税額軽減(1.6億円まで非課税): 適用なし
  • 健康保険の被扶養者(扶養に入る): 適用なし
  • 国民年金第3号被保険者: 適用なし
  • 遺族年金: 受給権なし

年収差が大きいカップルほど、この差は大きくなります。

4. 子どもの共同親権を持てない

一方のパートナーが生んだ子ども、あるいは養子に迎えた子どもの法的親権は、産んだ(養子にした)本人のみに認められます。もう一方のパートナーは「事実上の親」ではあっても、子どもの法定代理人にはなれません。

病気のとき手術同意書にサインできない、学校行事で「保護者」として扱われないなどの問題が起きます。

5. 引っ越しで効力が消える(自治体限定)

パートナーシップ制度は発行した自治体内でしか通用しません。転居すると証明書は失効し、新しい自治体で再度申請する必要があります。転居先が未導入なら、そもそも使えません。

自治体間の相互利用協定(都市間連携)を結ぶ自治体も増えていますが、全国どこでも有効な仕組みではないことを前提に考えましょう。


結婚・事実婚・パートナーシップ制度の比較表

「結局、パートナーシップ制度ってどの位置づけ?」という疑問に一覧で答えます。

項目法律婚事実婚パートナーシップ制度
法的効力△(一部判例のみ)×(法的効力なし)
戸籍への記載××
法定相続権××
配偶者控除(税)××
健康保険の扶養×
遺族年金の受給×
公営住宅の入居
病院の面会・手術同意
携帯家族割・家族カード
勤務先の慶弔休暇○(導入企業のみ)
子どもの共同親権×(認知で父子関係)×
引越し後の効力×(再申請必要)

法律婚は異性カップルにしか認められていないのが現状です。同性カップルが選べるのは「事実婚(一部判例で準婚姻と認定)」か「パートナーシップ制度」のみ。どちらが適するかは、あなたが重視する項目によります。

同性婚をめぐる最新の裁判動向は結婚の自由をすべての人に(Marriage For All Japan)で継続的にフォローされています。


デメリットを補う4つの法的手段

パートナーシップ制度だけでは相続・親権の問題は解決しません。次の法的手段を組み合わせることで、現行制度の不利を実質的にカバーできます。

1. 公正証書遺言の作成

最優先で取り組むべき対策です。「財産の〇〇をパートナー〇〇に遺贈する」と明記した公正証書遺言があれば、パートナーに確実に財産を渡せます。

費用 財産額により1万6,000円〜11万円前後(公証役場の手数料)

必要書類 戸籍謄本、印鑑登録証明書、財産目録、証人2人

強み 法的効力が最も強い。自筆証書遺言と違い紛失・改ざんのリスクがない

法定相続人(親・兄弟姉妹)には「遺留分」があるため、パートナーへの遺贈が全額そのまま認められるわけではない点に注意が必要です。

2. 任意後見契約の締結

パートナーが認知症・事故・病気で判断能力を失ったとき、本人に代わって財産管理や医療判断をする人を事前に決めておく契約です。公正証書で作成する必要があります。

任意後見契約を結んでおくと、以下が可能になります。

  • パートナーの銀行口座の管理・入出金
  • 介護サービスの契約・入院手続き
  • 手術・延命治療の同意(医療機関の運用による)
  • 不動産の売却・賃貸借契約

費用は公正証書作成料(約2万〜3万円)+ 後見監督人への報酬(月1〜3万円、後見開始後のみ)。

3. 生命保険の受取人指定

パートナーを死亡保険金の受取人に指定することで、遺産とは別の形でパートナーに資金を残せます。保険金は原則として遺留分の対象外で、受取人固有の財産になるため、親族とのトラブルを避けやすくなります。

4. 養子縁組(状況を見て慎重に)

一方のパートナーがもう一方を「養子」にすると、法的な親子関係が成立し、相続権・扶養義務が発生します。ただし以下の制約があります。

相続対策として一部のカップルが使う方法ですが、同性婚法制化を見据えると安易には勧められません。LGBTや同性カップルが将来に備えて絶対に準備すべきことでも養子縁組のリスクが詳しく解説されています。


あなたはパートナーシップ制度を使うべき?判断フロー

制度を使ったほうがいい人、そうでない人を状況別に整理しました。

使うべき人(メリットが大きい)

おすすめ
  • 同棲・結婚を考えているカップル: 公営住宅・民間賃貸の審査で有利
  • 公的な「家族」としての承認が欲しい人: 心理的・社会的な意味合いを重視する
  • パートナーシップ制度が導入された自治体に定住予定の人: 引越しリスクが低い
  • 勤務先が同性パートナーの福利厚生を認めている人: 証明書で申請が通りやすくなる
  • パートナーと医療現場で家族扱いを受けたい人: 面会・手術同意で安心

慎重に考えるべき人

要検討
  • 全国転勤がある仕事の人: 引越しごとに再申請が必要で手間がかかる
  • まだカミングアウトしていない人: 自治体によっては住民票に「未届の妻・夫」と反映されるため、配慮が必要
  • 外国人パートナーがいる人: パートナーシップ制度では在留資格(結婚ビザ相当)が取れない
  • パートナーの家族と関係が悪い人: 相続・財産問題の備えに遺言書が不可欠
  • 子どもを一緒に育てたい人: 制度は親権問題を解決しない。出産・養子・特別養子縁組の選択を優先的に検討

「使う」「使わない」のどちらを選んでも、相続と任意後見の対策は別途必要です。

家族について話し合うカップル


パートナーシップ制度でよくある質問

Q: パートナーシップ制度に登録すると職場にバレますか?

パートナーシップ証明書は自治体が発行する書類で、勤務先に自動的に通知される仕組みはありません。ただし自治体によっては住民票の続柄欄に「縁故者」「未届の夫・妻」と記載されることがあり、会社の年末調整書類や社会保険手続きで住民票を提出する際に見られる可能性があります。カミングアウトしていない場合は、申請前に自治体窓口で「住民票への反映があるか」を必ず確認してください。

Q: どの自治体でも同じメリットが受けられますか?

自治体によって大きく異なります。公営住宅・病院面会・家族割などは共通ですが、住宅手当の支給、緊急連絡先としての扱い、養育手当の受給は自治体ごとに差があります。渋谷型(条例型)は公正証書が必要な分、民間での効力がやや強く、世田谷型(要綱型)は手続きが簡便ですが対応範囲がやや限定的です。居住予定の自治体のガイドブックを必ず入手しましょう。

Q: 解消するとき(別れるとき)はどうすればいいですか?

離婚届のような手続きは不要ですが、発行元の自治体に「解消届」を提出します。ほとんどの自治体で本人の申し出のみで解消でき、相手の同意は不要です(DVなど関係破綻時のため)。財産分与や慰謝料は法律上の夫婦ではないため自動的には発生しませんが、同居期間中に形成した財産があれば話し合いで分けるのが一般的です。

Q: 外国人パートナーの在留資格はどうなりますか?

パートナーシップ制度は在留資格(ビザ)の取得根拠にはなりません。現在、同性パートナーの配偶者ビザは日本では認められていないため、留学・就労など他の在留資格で滞在する必要があります。ただし、2013年から「日本人と同性婚した外国籍の人への特定活動ビザ」が一部認められるようになっています。詳細は入管または弁護士への相談が必須です。

Q: パートナーシップ制度を使っても同性婚を求める運動に参加できますか?

できます。パートナーシップ制度は同性婚の代替ではなく、同性婚が法制化されるまでの過渡的な仕組みと位置づけられています。制度を使いながら同時に同性婚訴訟の原告になっている人もいますし、パレード・署名活動への参加も問題ありません。むしろ制度利用者が増えることで「制度だけでは足りない」事例が可視化され、法改正の議論が前に進みます。

Q: 同性婚が法制化されたらパートナーシップ制度はどうなりますか?

現時点では明確な方針はありませんが、同性婚が認められた場合、婚姻届に切り替えるのが自然な流れです。自治体の制度は法律婚を補完する役割に縮小されるか、事実婚カップル向けに残る可能性があります。同性婚をめぐる裁判の進捗はMarriage For All Japanで確認できます。


パートナーシップ制度を使うための3ステップ

ステップ1: 居住自治体の制度を確認する

  1. みんなのパートナーシップ制度 で自治体の制度有無を検索する
  2. 自治体HPで必要書類・手数料・予約要否を確認する
  3. 渋谷型(条例型)か世田谷型(要綱型)かを把握する

ステップ2: 書類を準備して申請する

  1. 住民票、本人確認書類(免許証・マイナンバーカード)を用意する
  2. 渋谷型の場合は公証役場で公正証書を作成する(事前予約、費用約6万円)
  3. 宣誓書に2人で署名し、自治体窓口で提出する(当日発行の自治体が多い)

ステップ3: 併用すべき法的手段を整える

  1. 公正証書遺言を作成する(相続対策の最優先)
  2. 任意後見契約を公正証書で結ぶ(医療・介護の備え)
  3. 生命保険の受取人をパートナーに変更する

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