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【2026年】同性カップル養子縁組|届出からデメリットまで

同性カップルが法律上の「家族」になるための養子縁組を完全ガイド。届出の5ステップ、相続・税務面のメリット、関係を無効化されるリスク、同性婚法制化後の影響、パートナーシップや遺言との比較、向かない人まで、2026年最新情報を当事者目線で整理しました。

Pace Magazine 編集部
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同性婚が認められない日本で、それでも「法律上の家族」として一緒に生きていきたい——その願いを叶える現実解の一つが、養子縁組です。

養子縁組はあくまで「親子になる」ための制度で、「夫婦になる」ための制度ではありません。届出は市区町村窓口に行くだけで成立し費用もゼロですが、後から関係を無効化されたり、同性婚が法制化された後に婚姻できなくなったりするリスクが伴います。

この記事では、養子縁組の届出5ステップ、メリット5つとデメリット6つ、向かない人の見分け方、パートナーシップや遺言書との比較まで、当事者目線で整理しました。読み終えたあなたが「自分たちに必要なのはどの選択肢か」を判断できるようになることを目指します。

書類にサインをする2人

同性カップルにとっての養子縁組とは

養子縁組とは、血縁関係のない2人を法律上の「親子」とする制度です。日本では同性婚が認められていないため、年上のパートナーを「養親」、年下のパートナーを「養子」とすることで、同性カップルが法的な家族関係を結ぶ手段として活用されてきました。

ここで使われるのは普通養子縁組(民法792条以下)です。子どもを迎え入れる「特別養子縁組」とは異なり、年齢や同居要件が緩やかで、当事者2人の合意と届出だけで成立します。

普通養子縁組と特別養子縁組の違い
項目普通養子縁組特別養子縁組
対象同性カップルも可法律上の夫婦のみ(同性カップル不可)
養親の要件養子より年上の成人25歳以上の夫婦(一方は20歳以上可)
実親との関係継続(実親子関係も残る)終了
戸籍の表記「養子」「養女」と記載実子と同じ表記
解消協議または裁判で可能原則不可

同性カップルが選べるのは普通養子縁組のみです。特別養子縁組は「法律上の夫婦」が要件のため、現行法では同性カップルが利用できません(EMA日本:同性カップルにも養子を認めるのですか?)。

なぜ同性カップルが養子縁組を選ぶのか

パートナーシップ制度は法的効力を持ちません。一方で養子縁組は、戸籍に「親族関係」が記録され、法定相続権、健康保険の被扶養者資格、苗字の統一などの法的効果が生まれます。今すぐ国レベルの「家族としての法的保護」が必要なカップルにとって、現行法で唯一の手段になっているのが実情です。


養子縁組の届出5ステップ

裁判所手続きは不要で、市区町村の窓口で1日で完結します。費用もかかりません。

  1. お互いが20歳以上であることを確認する:養親も養子も成年(民法792条)。年下のほうが養子になります。1日でも年下なら成立可能です。
  2. 証人2名を依頼する:成人であれば誰でも構いません。親族でなくても、友人や同僚に頼めます。証人にカミングアウトする必要があるため、信頼できる人を選んでください。
  3. 養子縁組届を入手する:市区町村の戸籍課窓口で受け取るか、自治体のウェブサイトからダウンロードします。書式は全国共通です。
  4. 必要事項を記入し、証人に署名してもらう:養親・養子それぞれの氏名、本籍、住所、両親の氏名、新しい本籍地などを記入。証人2名の署名・押印(または記載のみで可とする自治体も増えています)が必要です。
  5. 本籍地または住所地の市区町村窓口に提出する:戸籍課に届出。受理されれば即日で養子縁組が成立し、戸籍に反映されます。

費用は0円。婚姻届よりもむしろ手続きが簡単です。

注意:未成年や後見人がいる場合

未成年者を養子とする場合(自己または配偶者の直系卑属を除く)、または後見人が被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可書が必要になります。同性カップル同士の届出では通常関係しませんが、片方に後見人がついている場合は事前に確認しましょう。


養子縁組のメリット5つ

養子縁組の最大の価値は「法律上の家族」として認められる点です。具体的に何が変わるのかを整理します。

1. 法定相続人になれる(相続権が発生する)

最大のメリット

養親が亡くなったとき、養子は配偶者と同じく第一順位の法定相続人になります。実子と同じ取り分です。逆に養子が先に亡くなった場合も、養親が法定相続人になります。

パートナーシップ制度では1円も相続できませんが、養子縁組なら遺言書がなくても遺産が確実にパートナーへ渡ります。

2. 相続税の優遇措置を受けられる

法定相続人になることで、以下の税制優遇が適用されます。

  • 基礎控除額の上乗せ:3,000万円 +(600万円 × 法定相続人数)の式で控除額が増える
  • 生命保険金の非課税枠:500万円 × 法定相続人数まで非課税
  • 死亡退職金の非課税枠:500万円 × 法定相続人数まで非課税
  • 相続税の2割加算を回避:通常、配偶者と1親等血族(実子・実親)以外は税額が2割加算されますが、養子は対象外
  • 小規模宅地等の特例:自宅を相続する際の評価額を最大80%減額できる

ただし配偶者税額軽減(1.6億円まで非課税)は使えません。あくまで親子関係の優遇であり、夫婦としての優遇は受けられない点に注意してください。

3. 同じ苗字を名乗れる

養子になった側は、原則として養親の苗字を名乗ります(民法810条)。これにより夫婦のような同姓を実現できます。

ただし苗字を変えるのは養子側のみで、養親側は変わりません。「お互いに新しい苗字にする」ことはできない点が、法律婚との大きな違いです。

4. 健康保険の被扶養者になれる

養子縁組により親族関係が成立するため、養親が被保険者であれば養子を健康保険の被扶養者として扶養に入れられます(収入要件あり:年収130万円未満など)。これにより養子側は保険料の自己負担なしで医療を受けられます。

国民年金の第3号被保険者は配偶者限定のため対象外ですが、健康保険のメリットは大きいです。

5. 病院での面会・親族としての対応が確実になる

「親子」として戸籍に記録されているため、医療現場や行政の窓口で「家族関係を証明できない」というトラブルが起きません。手術同意書への署名、ICUでの面会、緊急時の身元引受などが確実に通ります。

パートナーシップ制度でも病院対応はかなり改善していますが、「制度未導入の自治体に引っ越したら使えなくなる」リスクを養子縁組は受けません。全国どこでも有効な点が決定的な違いです。

病院で寄り添うカップル


養子縁組のデメリット・リスク6つ

メリットだけ見て届出すると、後から重大なトラブルになりかねません。配偶者ではなく親子になるという制度の本質を理解した上で判断してください。

1. 「親子」になることで本音とのギャップが生じる

養子縁組は法律上、「親子になる意思」を前提とした制度です。同性カップルの本音は「夫婦・パートナーになりたい」であり、ここに本音と建前のズレがあります。

戸籍上、年下のパートナーは「養女」「養子」と記載され、年上のパートナーが「親」になります。書類上の表記、職場や行政手続きでの説明、親族とのやりとりにおいて、心理的な違和感を抱える人は少なくありません。

2. 関係が「無効」と訴えられるリスク

無効と認められれば相続権を失い、税法上の優遇も全て遡って取り消されます。対策としては、養子縁組と同時に公正証書遺言を作成し、「仮に養子縁組が無効でも遺言として財産を遺贈する」二重の備えをするのが現実的です。

3. 同性婚が法制化されても婚姻できない可能性

民法736条は、養親子関係にあった人同士は離縁後も婚姻できないと定めています(民法第736条 - Wikibooks)。

養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

つまり、将来日本で同性婚が法制化されたとしても、養子縁組をしているカップルは離縁してもなお、その相手とは婚姻できないという解釈が有力です。最高裁大法廷で同性婚に関する判断が回付されている2026年現在、ここは慎重に考えるべきポイントです。

詳しくは【2026年】同性婚は日本でいつ認められる?最新動向と当事者の選択肢で整理しています。

4. 配偶者ではないため夫婦の権利は得られない

法定相続人にはなれますが、配偶者特有の権利は適用されません。

養子縁組では得られない権利
  • 配偶者税額軽減:1.6億円まで相続税非課税の枠がない
  • 遺族年金の受給権:パートナー死亡時の遺族年金を受け取れない
  • 国民年金第3号被保険者:配偶者限定のため対象外
  • 不貞行為の慰謝料請求:浮気されても法律上の慰謝料請求はできない
  • 財産分与:別れる際に共有財産を法定で分けるルールが適用されない
  • 年金分割:婚姻期間中の年金記録を分けられない

「夫婦のような扱い」を求めて養子縁組したのに、夫婦としての権利の多くが手に入らない——このギャップは大きいです。

5. 離縁(解消)が困難

養子縁組を解消するには「離縁」の手続きが必要です。お互いの合意があれば協議離縁届を提出するだけで済みますが、片方が同意しない場合は次の段階に進みます。

  1. 協議離縁:双方合意で離縁届を市区町村に提出。即日成立。
  2. 調停離縁:合意できない場合は家庭裁判所で調停を申し立て。
  3. 裁判離縁:調停も不成立なら離縁訴訟。「悪意の遺棄」「3年以上生死不明」「縁組継続が困難な重大事由」のいずれかが必要。

別れたいのに相手が応じてくれない場合、裁判で離縁理由を立証する負担がかかります。離婚と違って「性格の不一致」は離縁事由にならず、判例上ハードルは高めです。

6. 外国人パートナーの在留資格にはならない

養子縁組による在留資格は「日本人の配偶者等」ではなく「定住者」または「永住者の配偶者等」のうちの子としての扱いになります。配偶者ビザのような優遇はありません。

加えて、入管が「偽装養子縁組」と判断するリスクがあり、就労資格・定住資格の取得は実務上困難なケースが多いと指摘されています。外国人パートナーとの在留問題は、別の専門家(行政書士・移民専門弁護士)に相談してください。


養子縁組が向く人・向かない人

ここまでのメリット・デメリットを踏まえて、あなたが養子縁組を選ぶべきかを判断する材料を整理します。

養子縁組が向く人

こんな人におすすめ
  • すぐにでも法的な家族関係を確保したい人:相続・医療・行政手続きで「赤の他人」扱いを終わらせたい
  • 法定相続人が他にいないか、親族と良好な関係にある人:無効を訴えられるリスクが低い
  • 長期間同居しており関係が安定している人:縁組意思の証明がしやすい
  • 将来的に同性婚が法制化されてもこの相手と婚姻するつもりがないか、そもそも法制化を待てない事情がある人:民法736条の制約を受け入れられる
  • 片方が高齢、または健康面で不安があるカップル:相続・後見の対策を急ぎたい

養子縁組が向かない人

こんな人は別の手段を検討
  • 若いカップル(30代前半まで):同性婚法制化を見据えるなら、養子縁組より公正証書遺言+パートナーシップ制度の組み合わせが現実的
  • どちらかの親族が同性関係に強く反対している人:死後に「縁組無効」を訴えられるリスクが高い
  • カミングアウトしておらず、戸籍に「養子」記載されることを避けたい人:戸籍は親族や勤務先に提示する場面があり、隠し続けるのは困難
  • 外国人パートナーで在留資格が必要な人:養子縁組では配偶者ビザに相当する優遇は得られない
  • 将来別れる可能性を残したい人:離縁手続きは離婚より重い

迷ったら、養子縁組ではなく「公正証書遺言+任意後見契約+パートナーシップ制度」の3点セットを優先する方が、柔軟性も高く、同性婚法制化後にスムーズに移行できます。


養子縁組 vs パートナーシップ制度 vs 遺言書の比較

「結局、どの制度を組み合わせれば良いか」を一覧で整理します。

項目養子縁組パートナーシップ制度公正証書遺言
法定相続権×△(遺贈で財産を渡せる)
相続税の基礎控除上乗せ××
苗字の統一○(養子側のみ)××
健康保険の被扶養者××
病院での面会・手術同意
公営住宅の家族入居×
全国どこでも有効×(自治体限定)
同性婚法制化後の婚姻×(民法736条)
関係を無効化されるリスク△(縁組意思を争われる)なし△(遺留分の主張あり)
別れる時の手続き重い(離縁)軽い(解消届のみ)撤回可能
費用無料無料〜数万円1.6万〜11万円

併用パターンの推奨度:

  • 若いカップル:パートナーシップ制度 + 公正証書遺言 + 任意後見契約
  • 中高年・関係が安定:パートナーシップ制度 + 公正証書遺言 + (必要なら)養子縁組
  • 同性婚法制化を待てない・親族関係が複雑:養子縁組 + 公正証書遺言(縁組無効リスクの保険)

公正証書遺言の作成費用は財産額によって1.6万円〜11万円程度です(日本公証人連合会:手数料)。LGBTQ向けの法律相談に対応している事務所も増えており、よりそいホットライン LGBT専門ライン(0120-279-338、ガイダンス4番)などで支援団体や相談先の情報を得られます。


養子縁組と一緒に考えたい関連制度

養子縁組だけでは解決しない問題もあります。同性カップルの暮らしをトータルに守るには、以下の制度・記事もセットで検討してください。


同性カップル養子縁組のよくある質問

Q: 養子縁組したことを職場や親族に隠せますか?

戸籍に養子・養親として記載されるため、戸籍謄本を提出する場面(住宅ローン申込、就職時の身元保証、相続発生時など)で関係が判明します。長期的には完全に隠し続けるのは困難です。住民票には反映方法が自治体によって異なるため、申請前に窓口で「住民票の続柄欄にどう記載されるか」を確認してください。カミングアウトしていない場合は、養子縁組の前にアウティング対処法を読み、リスクを把握しておくことを推奨します。

Q: 同性婚が日本で認められたら、養子縁組はどうなりますか?

民法736条の規定により、養子縁組をしていた相手とは離縁後も婚姻できない可能性が高いです。同性婚法制化と同時に「養子縁組経由で家族関係にあるカップルは婚姻できる」と特例が設けられない限り、現行法の枠組みでは婚姻は認められません。今後の立法動向次第ですが、近い将来この相手と婚姻したいなら、養子縁組は避けた方が安全です。

Q: 養子縁組を後から解消するには、どんな手続きが必要ですか?

双方の合意があれば、市区町村窓口に「養子離縁届」を提出するだけで成立します。費用ゼロ・即日有効です。一方が同意しない場合は、家庭裁判所での調停離縁、それでも不成立なら離縁訴訟になり、「悪意の遺棄」「3年以上生死不明」「縁組継続を困難にする重大事由」のいずれかを立証する必要があります。気軽に解消できる制度ではない点を認識してください。

Q: 養子になった側の苗字は必ず変わりますか?

原則として養子は養親の苗字を名乗りますが(民法810条)、婚姻によって既に苗字が変わっている人(夫婦同氏の原則を経た人)は例外的に元の苗字を保てます。同性カップルでは婚姻歴がない人が大半のため、ほぼ全員が養子側の苗字変更を受け入れることになります。仕事上の旧姓使用などで実害を最小化する工夫も検討してください。

Q: 外国人パートナーと養子縁組はできますか?

日本人と外国人の普通養子縁組は手続き上は可能ですが、配偶者ビザに相当する優遇は得られません。在留資格は「定住者」や「永住者の配偶者等」の子としての扱いになり、入管が「偽装縁組」と判断するリスクもあります。外国人パートナーとの在留問題は専門の行政書士・弁護士に相談することを強く推奨します。同性婚を認める国(オランダ、台湾など)での婚姻+日本での法的効力検討も合わせて考えると視野が広がります。

Q: 養子縁組すれば子どもも一緒に育てられますか?

普通養子縁組はあくまで「同性カップル2人」の親子関係を作る手続きで、子どもを共同で育てる権利を作るものではありません。同性カップルが子どもを迎える方法は、特別養子縁組(現行法では夫婦のみで同性カップル不可)、養育里親制度(東京都・大阪府などで同性カップル可能)、精子提供、海外での代理出産など複数あります。それぞれ法的・倫理的に複雑なので、日本LGBTサポート協会の解説記事などで最新情報を確認してください。

Q: 養子縁組と公正証書遺言、どちらを優先すべきですか?

まずは公正証書遺言を優先することを推奨します。遺言書は数万円で作成でき、いつでも書き換え可能、関係を法律上「親子」にする副作用もありません。一方、養子縁組は無料ですが「親子になる」という重い変化を伴い、解消も困難です。遺言書で相続を確保した上で、それでも法定相続人としての地位や健康保険の扶養が必要なら、養子縁組を追加で検討する——この順序が最も柔軟です。


自分たちに合う制度を見つける3ステップ

養子縁組を含めて、最終的に何を組み合わせるかを決めるための行動プランです。

  1. 守りたい権利を書き出す:相続、苗字、健康保険、医療同意、住宅、年金、外国人ビザ、子育て——どれが自分たちの優先順位か紙に書き出す
  2. 3つの選択肢を比較する:養子縁組、パートナーシップ制度、公正証書遺言+任意後見契約。それぞれが「守りたい権利」を何%カバーするか確認する
  3. 専門家に相談する:司法書士・行政書士・弁護士のうちLGBTQ案件に対応している事務所に有料相談(5,000〜10,000円程度)。1時間で具体的な行動プランが固まる
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