契約結婚とは?友情結婚・偽装結婚との違いをわかりやすく解説
契約結婚の定義・法的位置づけ・友情結婚や偽装結婚との違いを解説。婚前契約書に書ける内容・メリット・デメリット・検討時のチェックリストも紹介。
契約結婚とは、結婚生活におけるルールや離婚時の条件を事前に契約書で取り決めた上で結婚することだ。法律上は一般的な結婚と全く同じ扱いになる。
「友情結婚」「偽装結婚」と混同されがちだが、3つは根本的に異なる。この記事では、弁護士の見解を交えながら違いを整理し、契約結婚を検討する際に知っておくべき法的リスク・メリット・デメリットを解説する。
契約結婚・友情結婚・偽装結婚の違い
3つの最大の違いは「婚姻意思の有無」と「目的」だ。
| 契約結婚 | 友情結婚 | 偽装結婚 | |
|---|---|---|---|
| 定義 | 結婚生活のルールを契約書で定めた上で結婚 | 性的関係を前提とせず、友情・信頼ベースで結婚 | 在留資格取得や犯罪目的で形式的に結婚 |
| 婚姻意思 | あり | あり | なし |
| 法的な有効性 | 有効 | 有効 | 無効(民法第742条) |
| 恋愛感情 | 問わない | 問わない | なし(目的が別にある) |
| 性的関係 | 当事者の合意次第 | 原則なし | なし |
| 主な対象 | セクシャリティ問わず | LGBTQ当事者が多い | — |
| 違法性 | なし | なし | あり |
契約結婚は「恋愛なしの結婚」ではない
誤解されがちだが、契約結婚は「恋愛がない結婚」を意味するわけではない。恋愛感情のあるカップルが、結婚生活のルールを明文化するために契約書を交わすケースもある。
契約結婚とは、結婚生活におけるルールや、離婚するときの条件を契約書にしてから結婚することをいいます。二人の間に夫婦となる意思自体はあります。
つまり契約結婚の本質は「恋愛の有無」ではなく、「結婚生活のルールを事前に書面化すること」だ。
友情結婚との違い
友情結婚は契約結婚の一形態とも言えるが、明確な違いがある。
- 契約結婚: セクシャリティに関係なく、結婚生活のルールを契約で定める結婚全般
- 友情結婚: 性的関係を前提とせず、友情・信頼関係をベースにしたパートナーシップ。LGBTQ当事者(ゲイ、アセクシャル、ノンセクシャルなど)の間で特に広まっている
友情結婚相談所カラーズによれば、友情結婚の当事者は「お互いに相手に性的感情を持たないため、将来的に性的な不満から関係が破綻するリスクが低い」という点が、一般的な契約結婚との違いだ(出典: カラーズ)。
友情結婚について詳しくは友情結婚とは?完全ガイドを参照してほしい。
偽装結婚との決定的な違い
偽装結婚は犯罪行為だ。契約結婚とは根本的に異なる。
偽装結婚とは、夫婦として生活する実態も意思もないのに、在留資格の取得や手当の不正受給などを目的として婚姻届を提出する行為を指す。公正証書原本不実記載罪(刑法第157条) に該当し、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性がある。
契約結婚・友情結婚との違いは明確だ:
- 契約結婚・友情結婚: 当事者に「夫婦として生活する意思」がある → 合法
- 偽装結婚: その意思がない → 違法(刑法第157条)
契約結婚のメリット
1. 結婚前にルールを明確化できる
契約結婚の最大のメリットは、結婚生活のルールを事前に書面化できることだ。口約束は「言った・言わない」の争いになるが、書面にしておけば後からの紛争を防げる。
具体的に取り決められる内容:
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 家事・育児の分担 | 「家事は50:50で分担する」「育児休暇は双方が取得する」 |
| 生活費の負担割合 | 「収入比率に応じて負担する」「共同口座に毎月○万円ずつ入金」 |
| 財産の管理方法 | 「婚前財産は各自の固有財産とする」 |
| 離婚時の条件 | 「慰謝料の有無」「財産分与の方法」 |
| 浮気・不倫の定義と対応 | 「異性との2人きりの食事は事前に報告する」 |
2. 法的な保護を受けられる
婚姻届を提出することで、以下の法的権利が発生する。
- 相続権: 配偶者としての法定相続分(1/2)が認められる
- 税制優遇: 配偶者控除(年間最大38万円の所得控除)
- 社会保険: 被扶養者としての健康保険加入
- 医療上の権利: 手術の同意書への署名、病状の説明を受ける権利
特にLGBTQ当事者にとっては、同性婚が法制化されていない日本で法的保護を得る現実的な手段となっている。
3. 社会的な安定を得られる
「既婚者」としてのステータスにより、職場や親族からの「結婚しないの?」という圧力から解放される。
契約結婚のデメリットとリスク
1. 離婚時の財産分与は避けられない
法的に有効な結婚である以上、離婚時には財産分与が発生する。「契約結婚だったから」という理由で免除されることはない。
ただし、婚前契約で財産分与のルールを事前に定めておくことは可能だ。
2. 契約書に書けないこともある
婚前契約書には法的な制約がある。民法の強行規定に反する内容は、たとえ合意があっても無効になる。
書けないこと(無効):
- 「離婚しても親権は放棄する」(親権は子の利益のためのもの)
- 「一夫多妻を認める」(重婚の禁止)
- 「離婚を一切認めない」(離婚の自由は放棄できない)
書けること(有効):
- 家事分担のルール
- 生活費の負担割合
- 婚前財産の帰属(「結婚前の貯金は各自の固有財産」)
- 離婚時の財産分与の方法
- 不貞行為に対する慰謝料の取り決め
3. 感情の変化リスク
結婚後に一方が恋愛相手を見つけた場合、契約結婚が障壁になる。特に、友情結婚ではなく一般的な契約結婚の場合、パートナーのセクシャリティが異なるため、将来的に性的・恋愛的な不満が生じるリスクがある(出典: カラーズ)。
事前に「恋人ができた場合のルール」を契約書に盛り込んでおくべきだ。
4. 婚前契約書の法的効力は限定的
婚前契約書を公正証書にしても、それだけで特別な法的効力が生まれるわけではない。
公正証書にしたからといって何か特別な法的効力が与えられるわけではなく、サインした人の本人確認をしてもらえるというだけですから、費用をかけてまで公正証書にする意味はないといえます。
ただし、離婚時の紛争で「双方が合意していた証拠」として裁判で考慮される可能性はある。作成する場合は弁護士に内容のチェックを依頼すべきだ。
契約結婚を検討する際のチェックリスト
契約結婚を検討している人は、以下を結婚前にパートナーと確認・合意しておくべきだ。
生活面:
- 同居するか・別居するか
- 生活費の分担方法と金額
- 家事・育児の分担ルール
- 住む場所
将来面:
- 子どもの有無・育て方
- 恋人ができた場合のルール
- 将来の介護に対する考え方
法的面:
- 離婚条件(どういう場合に離婚するか)
- 財産分与の方法
- 婚前財産の扱い
- 婚前契約書を作成するか(弁護士への相談を推奨)
よくある質問
Q. 契約結婚は合法?
合法だ。日本の民法は婚姻に恋愛感情を要件としていない。民法第742条は「当事者間に婚姻をする意思がないとき」のみ婚姻を無効としている。契約結婚の当事者には「夫婦として生活する意思」があるため、有効な婚姻として成立する。
Q. 契約結婚と事実婚の違いは?
契約結婚は婚姻届を提出する法律婚。事実婚は婚姻届を出さずに夫婦同然の生活を送る形態。契約結婚では法定相続権や配偶者控除が受けられるが、事実婚では受けられない。
Q. 婚前契約書の費用はどれくらい?
弁護士に依頼する場合、相場は5〜15万円程度。自分たちで作成することも可能だが、法的に有効な内容にするなら専門家のチェックを推奨する。
Q. 友情結婚に興味がある場合はどうすればいい?
友情結婚は契約結婚の中でも「性的関係を前提としないパートナーシップ」に重点を置いた形。LGBTQ当事者にとって特に関連が深い。詳しくは以下の記事を参照。
Q. LGBTQ当事者が契約結婚を考えるケースは?
同性婚が法制化されていない日本では、法的保護を得るために異性と友情結婚をするLGBTQ当事者がいる。ゲイ男性とレズビアン女性のペア、アセクシャルの人同士のペアなど、パターンは多様だ。自分のセクシャリティについて考えたい方はセクシャリティ診断も参考にしてほしい。
まとめ
契約結婚は、結婚生活のルールを事前に書面化する合理的なパートナーシップの形だ。法的に完全に合法であり、紛争予防や経済的メリットがある。
ただし、婚前契約書に書けない内容があること、公正証書にしても特別な法的効力は限定的であることは理解しておくべきだ。
LGBTQ当事者にとっては、友情結婚が契約結婚の中でも特に現実的な選択肢になる。興味がある人は、まず友情結婚とは?から読み始めてほしい。